すべてが未来につながっている
ふくしまオーガニックコットンプロジェクト
持続可能とか、地域再生とか、復興支援とか。
簡単にまとめると、そういうことなのでしょうが、私にとっては「癒しのプチ旅行」でした。
コロナによって長い間見合わせていたという、東京発着のボランティアバスツアー(通称ボラバス)が再開。
実際に参加したことで、循環型社会の実現とはこういうことかと、身をもって知ることができました。
そして、なにより楽しかった! ふくしまファンが増えていくのがわかります。
ふくしまオーガニックコットンプロジェクトとは
2012年にスタートしたプロジェクト。東日本大震災の影響で耕作が放棄された農地を利用し、コットン栽培によって新しい農業の再生をめざしています。コットンは、津波による塩害にも強く、放射物質の影響を受けにくい作物。地元農家の方々をはじめ、全国から集まるボランティアの方々により育まれています。
くわしくは、こちら
いわきおてんとSUN企業組合
http://www.iwaki-otentosun.jp/
朝7時30分、天ぷらバスに乗って東京駅前を出発
目的地まで、およそ3時間30分
じつは前日から眠れなかったんです、楽しみすぎて、ははは。
おかげでバスの中で爆睡でき、すがすがしい目覚めとともにいわきに到着しました(笑)。
ちなみに、今回のバスツアーは、エコツーリズム・ネットワーク「リボーン」が開催。
有限会社リボーン
https://reborn-japan.com/
「天ぷらバスで行く」と聞き、走行中に天ぷらでもふるまってくれるのか、と思ったら、燃料の話でした。
回収された廃食油から再生したバイオディーゼル燃料(BDF)を使ったバスとのこと。
「お腹が空いている方は、マフラー付近に立つと、天ぷらの香りを感じるかも〜」と、笑う添乗員。
実際に嗅いだ方々は「う〜〜む、わからん」と頭をひねる。それくらい一般のバスと変わりませんでした。
せっかくならエコなバスに乗ってでかけましょう、という計らい。とても気持ちがいい移動でした。
そして、今回のツアーはGOTOトラベルの対象でもあり、いただいた地域共通クーポンは、いわき名物「薄皮饅頭」に消えました(笑)。
畑の名は、愛する奥様の名前から
茶色のコットンは、日本古来から伝わる和綿「備中茶綿」
常磐自動車道を降りて、いざ、コットン畑へ。持参した長靴に履き替え、ボルテージは最高潮(笑)。
市内には数か所コットン畑があるそうですが、この日のボランティア先は、遠野町上根本地区にある「みぃこ畑」。
永山進さんが管理する栽培地で、畑の名前は奥様のお名前からとったそうです。愛妻家なんですね。
バスを降り、荷物置き場として通されたお宅に。。。目がくぎ付け!
なんと立派なお家!こんな大きな縁側はじめて見ました。広い庭には蔵もあります。
<コットン=白>のイメージだったので、茶色の綿花を見たときは、一瞬、枯れているのかと思いました。
このプロジェクトで栽培されているコットンは、日本古来から伝わる和綿「備中茶綿」。淡いベージュ色こそが特徴なんだそうです。
スタッフの説明があった後、畑へと足を踏み入れます。土がふかふかで、気持ちいい。
今回のミッションは、コットンボールと呼ばれる、柔らかい種子毛繊維を収穫すること。コットンボールは収穫時期を逃してしまうと、地面に落ちて汚れてしまい、使えなくなるといいます。自由に伸びる枝をかきわけ、宝探しのような気分でやさしくつかまえます。
「このふわふわっとした感触がたまらないの」とは、常連の参加者。綿の先っぽをつまんで下へゆっくりひっぱると、スポンととれる。快感です(笑)。「あなた初参加なの? じゃ、このコットンボール譲るわ」と、特大サイズを譲ってくれました。そういう交流も楽しかったです。
そもそもオーガニックコットンとは、3年以上、農薬・化学肥料が使われていない土壌で、自然に由来する有機肥料のみで栽培されたコットンをいいます。
なので、当然ですが畑は虫のオアシス。我が家では、リビングにハエ一匹入っただけで大騒ぎなのですが、こういう場所だとむしろかわいく見えてくるから不思議です。
お楽しみの昼食。地元の野菜と味噌汁が絶品。
残飯も肥料として使う徹底ぶり。
今回の参加者は15名ほど(コロナ対策で通常の半分以下での開催)。私は能天気な旅行者でしたが、
参加者の多くは以前から福島の復興に携わってこられた、ベテランのボランティアさんたちでした。
それがわかったのは、永山さんちのお庭でいただいた昼食時の自己紹介。
コロナ渦で手伝いに来られず、コットン畑がずっと気になっていた、という方ばかりでした。
昼食は、郷土の味満載のお弁当。さらに、永山さんがボランティアのために準備してくださった地元野菜と味噌汁。
これがおいしくておいしくて、おかわりの列ができていました。
「ゆで卵の殻や食べ残しは肥料にしますので、このバケツへ入れてください」とは、本プロジェクトの代表理事をつとめる吉田恵美子さん。食後の分別も勉強になります。
本プロジェクトは、コットンの収穫だけに終わらず、国内工場で繊維製品へと作り上げ、事業としても展開しています。
そのひとつが「株式会社 起点」。
起点の存在は、吉田さんから聞いてはいましたが、その製品を手にとってみたのははじめてでした。
手間がかかるとか、地球にやさしいとか、とかく素材自体に注目を集めるオーガニックですが、デザイン性の高さで攻めるという姿勢に共感します。
ロゴやホームページもハイセンス。代表・酒井さんのnoteは親しみがあり、とっても応援したくなりました。ぜひご覧ください。
株式会社 起点
http://kiten.organic/
さて、食後は、収穫したコットンをテーブルに並べて葉クズや枝などを取り除きます。根気がいる作業ですが、ゴミが混じると綿の質が落ちるそうで、大切な作業だそうです。
手を動かしながら会話ははずみ、こうした作業を通して参加者の親睦は深まっていくのかも知れません。
旅の締めくくりは、湯本温泉
コットンプロジェクトは人と人をつなぐ
名残惜しく畑を後にして、一行は湯本温泉へと移動。湯本温泉は日本三古泉の一つで、遠い昔から旅人の疲れを癒してきました。
老舗旅館「古滝屋」で汗を流して東京へと帰ります。のはずでしたが、私はこちらでツアーを離れ、宿泊して翌日もいわきをまわりました。
ふくしまオーガニックコットンプロジェクトの目的は、新しい農業の開拓だけではありません。
子供から大人までたくさんの人が関わり、新しい仕事を生み出し、コミュニティや生きがい、希望を作り出しています。
今回、ツアー参加者の中に知り合いはほとんどいませんでしたが、一緒に畑へ入り、一緒にごはんを食べ、バスを見送るときには、お仲間に入れてもらったような居心地のよさがありました。
吉田さんがSNSに投稿するコットン畑の画像に、ふわふわとしたコットンボールを見つけると、思わずつかみたくなる自分がいます。そう、すっかりハマってしまいましたw。
たくさんの人の想いがつまったプロジェクト。お手伝いにいったつもりが、いただいて帰ったものの方が多かった。
まさに、実りの秋にふさわしいスタディツアーでした。