不揃いな音が心地よい。工房YUAI作品展に学ぶ「自分らしさ」を解放するアップサイクル

冷たい空気のなかに、どこか懐かしい風景が広がる青梅のまち。2026年1月31日、社会福祉法人 友愛学園「工房YUAI」が2年に一度開催する展示会を訪ねました。

会場に一歩足を踏み入れると、そこには見る者の心を激しく揺さぶる、圧倒的なセンスのアート作品が並んでいました。障がい福祉の現場から生まれる表現は、なぜこれほどまでに自由で、力強いのでしょうか。

「音あそび」のワークショップや、素材をめぐるトークショーを通じて受け取った、たくさんの気づきと問い。その余韻を分かち合いたいと思います。

目次

既成概念を脱ぎ捨てる「音あそび」の時間

展示会の第一部は、「音あそび」の公開活動から始まりました。演奏家のシーナ・アキコさんとともに作り上げられるその空間は、いわゆる「演奏会」とは少し違います。

楽譜通りに奏でることよりも、楽器の音そのものを感じ、自発的なリズムを楽しめる環境。主催者の方の「見るより、参加する方がずっと楽しいですよ」という言葉に誘われ、私も楽器を手に取りました。

最初は「どうすればいいのだろう」と戸惑う私に、利用者のKさんがお手製の楽器の使い方を教えてくれました。

「うまく演奏しなきゃ、という大人の既成概念から解放されて、童心にかえれた気がします」

参加された方のそんな感想に、私も深く頷きました。正解を求めず、ただ音を楽しむ。それは、日々の役割に縛られがちな私たちの心を、ふっと軽くしてくれる魔法のような時間でした。

廃材が引き出す「奇抜さ」という才能

第二部では、テキスタイルに造詣が深い藤枝大裕さんをゲストに迎えたトークショーが行われました。

工房YUAIの作品づくりを支えているのは、繊維の町・富士吉田に眠る「廃材」です。株式会社「装いの庭」を経由して提供される工場用の残糸たちが、作り手の手によって唯一無二の形へと生まれ変わります。

トークの中で、藤枝さんが語った言葉が深く心に残っています。

「市販の材料では、ありふれたものに落ち着いてしまう。けれど廃材は、発想を奇抜にするんです」

この言葉は、私自身が向き合っているアップサイクルの本質を突いているように感じました。整いすぎた素材からは生まれない、偶然の出会いや歪みが生むインパクト。それは、既製品には出せない圧倒的な「個」の表現ではないでしょうか。

表現を社会と結ぶ、新しい地平

40年前から創作活動に取り組んできた友愛学園。会場には、和紙、刺繍、織物など、さまざまな表現がありました。それぞれの作品の傍に置かれたQRコードを読み取ると、普段の創作風景が映し出されるという仕掛けもユニークでした。

一つひとつの表現を追いかけていくと、その人の興味や物語が透けて見えてくるようで、自然と楽しい気持ちが湧いてきます。

同時に、こうした作品を見るたびに、考えさせられることがあります。 これほどまでに素晴らしい作品たちを、いかにして社会と結びつけ、その価値を広げていくか。

福祉、芸術、そして手仕事。さまざまな分野が手を取り合い、その境界線を溶かしていくことで、新しい地平が広がっていくのではないか。展示の余韻を抱きながら、帰り道の青梅のまちで、私にできることは何かを静かに考えていました。

初めて降り立った青梅駅。レトロな街並みが心地よく、私の大好きな場所がまた一つ増えました。

表現すること、自分らしくあること。 それは決して特別なことではなく、目の前にある素材や音と、素直に向き合うことから始まるのかもしれません。

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